80 view | 2018/07/06 00:00

都会のマタギと田舎のマタギ その13 まだ背広を仕立てますか?

都会のマタギと田舎のマタギ その13 まだ背広を仕立てますか?


今週、あのZOZOスーツで衣料業界で革命を起こそうとする衣料品通販サイト、ゾゾタウンを運営しているスタートトゥデイがフルオーダーのビジネススーツに参入という発表があった。背広製造の業界には激震が走るだろう。

私にとって背広はオフィシャルな作業着で、仕事に行くのにこれほど迷わないで着ていける便利なものはない。取締役会に出席しても、常勤の取締役、監査役がクールビズなのに、私やその他の非常勤役員が背広姿でという事が多いのは、会議への姿勢だ。

その便利な作業着が、ほころんで来るたびに、さて最後の1着を作るべきかと悩む。

1年ごとに更新の仕事だから、来年不要になって無駄な投資になるかもしれない。


やはり、まだまだ働きたいという欲と希望に負けて、東京駅前の雑居ビルの上にある15年ほどお世話になっている背広屋さんに出かけた。お世話になっている業界習慣にあわせて、ずっと黒っぽい背広が続いたのだが、毎年暑くなってゆく夏を気分でしのごうと、初めてイタリヤ産の明るい布地で、夏用の背抜きを仕立てることにした。

小さなポケットが追加されたサイドベンツだ。


さて、散財をしてしまう時は魔がさしたようなものだ。歩いて日本橋方面のデパートに向かい、新しい背広にマッチしたYシャツを一着頼んでしまった。

家に帰ってそれぞれの納期を見てびっくりした。

背広が3週間なのにもかかわらず、その10分の1の価格のYシャツが1か月かかるのだ!

これは、今の日本の人手不足を象徴する出来事だ。オーダー背広はまだ発注量があり、制作工程の分業化ができるので生産性は上がる。一方でYシャツは仕立てる人が少なくて、制作工程が合理化できないのだ。デパートで仕立てるYシャツは贈り物市場が支えているらしい。

考え方を変えればいまどき自腹で仕立てたYシャツを作り、しかもクリーニングして着ている(我が家には馴染みのクリーニング屋さんが通ってくれる)自分が絶滅危惧種だという事に、思い当たったのだ。その危惧種とともに老舗のデパートや通いのクリーニング屋さんもやがて一緒に亡くなってゆく。


ZOZOの背広の納期は1週間を目指すという。安くてしかも体にフィットしたフルオーダーの背広が出てきても、AIが進化してスマホからおしゃべりしてくれても、自分の体の寸法の変化を人間から聞く楽しみに私はお金を払う。

Yシャツ仕立ての過去データーから今回お腹の寸法が1年前より1センチ縮んだことで絶滅危惧種はとっても喜んでいるのだから。


‘本当?’‘お客様、間違いありません’。

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0堀田 一芙


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